精霊使い-Elementalars- #1~3(岡崎武士/講談社 |
久しぶりに見ると絵柄に当時の流行りが入ってるなぁ~
精霊使い達が理想郷を目指して戦った「精剣戦争」があった。決着を見ないまま終結した戦争が現代によみがえり、眠りについていた精霊使いが現れ始めた・・・
ある日突然、幼馴染の少女・麻美を精霊使いに連れ去られ、精剣戦争に巻き込まれた覚羅(かぐら)
ってな感じ。
89年に連載を開始、95年にOVA化、97年度・第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞と華々しい字面なのですが・・・未完の作品です。
一応決着らしき事が描いてはありますが「未完」と打つしか無いし、未完だからこそ時代の雰囲気が見える作品なのかもしれませんね。
それにしてもコレOVAになってたのか~全然知らなかった^^;)
<<流行のスタイルだけでなく>>
連載当初、主人公・覚羅の持つ力は「癒し」単なる治癒能力だろうと軽く読んでたんです。んでーレベル上げてーラスボス倒して終わりかのーと。
全然違ってました。
この頃、この手の魔法モノは流行りでしてなぁ。異世界に飛んでとか、不思議な力が使えてってのがポイント。代表的なのはBASARD!(岡崎さんとはアシの先輩後輩の間柄だとか)
最近では定番化してる感があり、色々と物語らしい味付けもされる様になりましたが、当時は「不思議な力が使える」だけ強調されてた気がしますね。
<<自己承認>>
精霊使いのテーマは「甘ったれた性格のまったく無力な少年が成長していく」事。
そして単に力や技を上げて成長するのでは無い成長でした。
覚羅の「癒し」はただ肉体が修復されるだけの力では無く、過去に乗り越えられなかった事、叶えられなかった事と向かい合って果たされる癒し・・・ある意味残酷な癒し。
それが正であれ負であれ、自分のアイデンティティとして作り上げて来た事柄が、自分の目を眩ませているとしたら、その固執妄執を取り除いてしまわなければ「癒され」はしません。
誰でも幼い頃の世界は狭くて、笑えば愛される、ワガママを言っても許容されて受入れられ愛される。でも成長するにつれ思い通りになった世界は消えうせ、特別で愛される存在だった自分は霧散してしまいますね。
その惨めで矮小な自分と立ち向えるかどうか・・・自分の過去に向かう覚羅、誰かの固執を解く覚羅、人が人として在る理由はどこにあるのか?
誰もが抱える葛藤を繰り返し見せてくれています。
岡崎武士の作品は気品があると評される事がありましたが、人の心の闇も光も描いているからでしょうか。
<<復帰>>
連載は岡崎さんの引退で終了しました。理由は病気・・・肺気胸。
この後もほとんど作品を発表される事はありませんでしたが、最近お仕事を再開されたそうです。デジタルツールが使いやすいのだと書かれている後書きが嬉しくてたまりませんね。
絵が描ける事は幸せな事です。もちろん上手く描けなくてもですよ^^)
健康はもちろん時間に設備と金。プロであろうと余裕が無ければ描き続ける事は難しいです。
どうか描ける時があるなら描いて欲しい。
描く事を楽しんでください。それは間違いなく幸せな事なんですから。
・・・人前に出す時は海外逃亡したくなるんですけど・・・その辺は精進しときます^^;)